お知らせ

2021年10月はnaruki takahashiさん

ー LABOが森の匂いに包まれました ー

 

2021年10月の空間コーディネートを手がけてくださったのは、naruki takahashi(ナルキ・タカハシ)さん

木工ろくろや木工旋盤と呼ばれる回転式の機械で丸太を削りながら、スツール、スタンド、器などを制作する新進気鋭の作家さんです。

特徴的なのは【自ら山に入って木を伐る】ということです。

ナルキさんは2020年10月まで木の伐採を仕事とする「山師」として会社に勤めていました。そのルーツとなったのは、山をフィールドに遊んでいた少年時代の経験です。

 

「身近に祖父が所有する山があり、父は木を扱う大工をしていました。木に携わることが当たり前の環境だったので、小学生のときから山へ入り、ノコギリを使って木を伐って遊んでいました。本当に山が大好きで、山師だったころも仕事だと思ったことはほとんどなく、自分のなかの一部分という感覚でした」

 

作品づくりをしたいと思うようになったのは、20歳のときです。「おしゃれなカフェに行くとかっこいいインテリアがあって、見て楽しむ方じゃなく、かっこいいと言ってもらえる方に自分がなりたかった」というナルキさんに、偶然カフェを開業予定だった知人が「木で何かつくってくれないか?」と声をかけたのがキッカケとなりました。

 

 

山で伐採された木の多くは家の建築材に使われますが、木の種類によって、あるいは、ヒビや節が多く入っているものなどは粉砕されて木材パルプとして利用されるか、搬出されずに山のなかで朽ちていくのをただ待つだけ、ということもあります。

ナルキさんが「作品にしたい」と思ったのは、そんな日の目を見ない木でした。

 

「木が好きなので、あえて穴があいている部分とか、割れている部分とか、ざらざらした部分とか……そうしたものもそのまま残して、かっこいいフォルムに仕上げたいと思いました。

伝え方が難しいのですが……作品として“つくる”のですが、あまり手を加えたくないんです。例えば、節がたくさんある木は、家の柱としては好ましいとされていません。でも、作品として見ると、節周りは模様が大胆に変化してキレイに見えるし、一つのアクセントになるんです。人間がつくれないものを、木は自然のなかで何十年もかけてつくっていて、それこそが木本来の美しさなんじゃないかと思うんです」

 

 

作品づくりの現場では、デザインを考えずに木を削り始めるのだそう。削っているうちに割れてくるものもあれば、なかに穴が空いていることもあるそうですが、そうした木の個性を崩さないように削り、仕上げていきます。

もちろん一度削ってしまえば元に戻すことはできません。木を削りながら一瞬一瞬の判断を積み重ね、バランスの取れた作品に仕上げていくのですから、高い集中力と感性が必要です。

木が何十年もかけて生みだしたものとナルキさんが瞬間的に捉えたもの、その奇跡的な出合いが心奪う美しさとなるのです。

 

 

今回のLABOのコーディネートでナルキさんは「木は、たった一つ置くだけで雰囲気も、そこの匂いまでも変化します。どんな空間にでも合うことを感じてもらえたら嬉しい」と語っていました。

 

例えば、鉢植えを置くスタンドとしてサラリと使ったり、器やスツールをそのまま置くだけでも空間の印象が変わります。

今回はナルキさんが大切にしている絵画や、「見ていると気分が落ち着く」というキャンドルも一緒にコーディネートしており、そうした他のインテリアと自然にマッチするのも木の良さです。

作家としての活動に本腰を入れるため、勤めていた会社を離れたナルキさん。11月には香南市に自らのアトリエをオープンさせ、より多くの方に作品を見てもらえるよう活動を広げていきます。そのなかで伝えたいことがあるといいます。

 

「山師として働いていたころ、人に『山で木を伐る仕事をしている』と伝えると、一部の方からは『森林破壊なんじゃないか』と誤解されることがありました。誤解されることが嫌で山師であることを言い出しづらい時期もありましたが、いまは作品を通して、山の現状や間伐の大切さを知ってもらいたいし、最終的にはより多くの人に山へ入って楽しく遊んでもらえるようなイベントもできたら良いなと考えています」

 

山を愛し、木と一緒に育ってきたナルキさんが教えてくれる“美しい世界”から、これからも目が離せません。

naruki takahashi(ナルキ・タカハシ)さんのInstagram